「うぅぅ……ヒドいです、しんのすけさん……」
あいちゃんは服の裾を絞りながら、恨めしそうにオラを見た。
「ごめんごめん。……でも、少しすっきりしたでしょ?」
「……確かに、それどころじゃなくなりましたけど……」
「でしょ?ハハハ!」
「……もう、笑いごとじゃないですよ」
そう言いながらも、あいちゃんは笑っていた。
その笑顔を見たオラは、少しだけ安心した。
「……それで、いいんだよ」
「え?」
「あいちゃんの苦悩とかは、正直オラにはどうすればいいのか分かんないよ。だけど、こうやって嫌なことを忘れて、笑ってもらうことは出来る。
辛い時とか、苦しい時は、そうやって笑うのが一番なんだよ。落ち込んでいるときに色々考えても、結局泥沼にはまっちゃうものだし。
笑って、心をスッキリさせて、そしてもう一度考えるんだ。どうしていくのか……どうしたいのかを。
――そうやって、オラは毎日生きてる」
「………」
「あいちゃん……今日は一日、思いっきり笑おうよ。そしたら、何かが変わるかもしれない」
「……そう、ですね……」
するとあいちゃんは、水にぬれた靴を脱ぎ捨てた。
「……しんのすけさん!もう一度、飛び込んでみたいです!」
「……うん!行こうよ!一緒にさ!」
それからオラとあいちゃんは、海で遊び回った。
彼女にとって、こうやって服のまま海で遊ぶのは、初めてなのかしれない。
彼女は笑っていた。凄く楽しそうに。