【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

みんなが笑顔で見送る中、式は始まった。
白いタキシード姿の風間くんと、純白のウェディングドレスを着たひまわり……風間くんは、車いすのひまわりを後ろから押しながらバージンロードを歩く。

風間くんはさることながら、最初にひまわりの姿を見た時には驚いた。

ひまわは、とても綺麗だった。
これまで一番近くで見ていたはずだった。でも、目の前にいるのは、間違いなく一人の女性だった。
純白に包まれた彼女の姿を見ていると、何だか感慨深くなる。
ずっと子供のように見ていたが……いつの間にか、彼女は大人になっていたようだ。

式が終わると、簡単なパーティーへと移る。
ひまわり達の結婚式が主ではあるが、どちらかというと、同窓会のようにも見える。
もちろんパーティーの中心にはひまわり達がいたが、それぞれの近況を報告し合い、酒を交わし、昔話に花を咲かせる……その光景には、温かみがあった。会場全体が、緩やかな時間の中にあった。

それを満足そうに眺めていると、突然、会場が真っ暗になった。
ざわざわとする会場の中、スポットライトがオラとひまわりを照らし出した。

(……なんだ?)

会場中の視線を受ける中、車いすに座ったひまわりは、風間くんが持つマイクに向けて話す。

「……会場のみなさん。今日は、私達の結婚式に出席していただき、本当にありがとうございます。
――皆様には申し訳ありませんが、今日この場にいる、私のお兄ちゃん……兄に、言葉を送りたいと思います。
少しの間、お付き合いください……」

会場中は、水を打ったように、静まり返る。全員が話を中断し、彼女に視線を送っていた。
その中で、ひまわりは手紙を手にし、静かに、囁きかけるように、読み始めた。

――お兄ちゃんへ。

お兄ちゃん、今日まで本当にありがとう。

考えてみれば、私はお兄ちゃんに甘えてばっかりでした。いつもお兄ちゃんにくっ付いて、泣いて、笑って、怒って、落ち込んで……それでもお兄ちゃんは、ずっと私を見てくれて……。
授業参観も、学芸会も、合唱コンクールも、卒業式も、入学式も……いつも、私を見てくれていました。
……本当に嬉しかった。

いつも泣きそうな時、傍にはお兄ちゃんがいてくれて、涙を拭ってくれました。そして言うんです。
“行こうか、ひまわり”――
座り込む私の手を掴んで、立ち止まる私を引っ張ってくれるんです。その手はとても暖かくて、とても安心できて……

ケンカした時も、次の日にはご飯を作ってくれてるんです。
不器用に、不愛想に笑いながら、美味しいか言ってくれるんです。

お兄ちゃん……あなたの妹で、本当に良かった。本当に幸せだった。
……今の私があるのは、お兄ちゃんのおかげです。

ずっと、大好きです。ありがとう、お兄ちゃん――――

――手紙の最後は、声に涙が混じり、うまく話せていなかった。
それでも、会場中が暖かい拍手に包まれていた。

オラは下を向き、ただ拍手を受ける。本当はひまわりに言いたかった。
お礼を言いたいのは、オラの方です――と。
でも前を向けなかった。兄としての意地なのかもしれない。
流す涙を、彼女には見せたくなかった。最後まで、笑顔を向けていたかった。

それでも、少しだけ視線を彼女に向ける。
――ひまわりは、微笑んでいた。
優しい雫が伝う顔で、ただ優しく、オラの方を見ていた。
彼女は、やっぱり太陽だった。優しく照らしてくれる太陽だった。
何度もオラのを救ってくれた、勇気付けてくれた、光あふれる、向日葵だった……

その姿を見ていると、益々彼女の姿を見ることが出来なくなってしまった。

……その後パーティーは、恙なく幕を下ろす。
そしてそれから2週間後、ひまわりは、風間くんと旅立っていった……。

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