メモの名前には、前田裕子とある。
…聞いたこともない。
母とどんな関係があるのだろう。
そこは小さなアパートだった。
チャイムを鳴らすと幾つくらいだろうか、
母よりもいくらか年配の女性が迎えてくれた。
「慶太君!?大きくなったのね!」
親戚のおばさんかよ。
「前田裕子さんでしょうか、母から訪ねるように言われたのですが…」
「私は裕子の母親よ。裕子も喜ぶわ。さ、上がってちょうだい」
「お邪魔します」
「裕子、慶太君だよ」
そこには…、仏壇と遺影があった。
微笑むその遺影の女性は、とても可愛く優しそうだった。
「裕子、慶太君大きくなったね、良かったね」
おばさんは遺影に話しかけ続けた。
「あの……」
俺と母とこの人と裕子さん、接点がまるで分からない。