男(一番上……7秒か)
男(再生)
男「……ははっ、指が震えてら」
男(怖ぇな。何が入ってんだか分かんねえ)
男「でも。これを聞かなきゃ。多分……前に進めない。だから」ピッ
『……あ、ゲフンゲフン』
男(何が聞こえるのかなんて分かってた)
男(もう二度と、俺の耳を打つことはないであろう声)
『……男』
男(名前を呼ばれるたびに、何でもできる気がした)
男(何万分の一っていう確率の奇病も魔法みたいに治して)
男(ずっとずっと前にさかのぼってやり直して)
男(あいつを、幸せにして)
男(でも……実際には、できやしなかった)
男(…………)
男(……俺は。俺は、おれは)
男(あいつのために、なにか、できたのかな)
『――――だいすきだよ』
「…………ああ。おれも、だいすきだ」
風が吹く。
桜が散る。
花びらが舞う。
桜色の竜巻のすぐそばに、あいつの眠る場所がある。
「すげぇなwwwお前ww毎年花見できるじゃねえかwwwww桜見たかったってwww言ってたしwwwドンピシャだなwwww」
ウソだ。俺が手配したのだ、この場所は。あいつが見たがっていた桜を毎年見せてあげられるように。
花束を墓前に捧げ、墓石をなでる。