女「まず、名前はノートの表面に書きなさい。中に書いたら内容を確認しなければ誰のだかわかりません」
女「次に、ノートに落書きをするのはやめなさい。ノートは勉強のためにあるものです」
女「最後に、もっときれいな字で書きなさい。復習するとき自分で書いた字が読めないんじゃないのかしら?」
男「・・・・は?余計なお世話だし」
女「それともう一個。部屋に入る時のノックは3回、あるいは4回です。2回は“入っていますか?”ですから」
男「・・・・うるせーな」
女「あなたの将来のために言っているんだけど?」
男「ッチ」
ガラガラ・・・バタン!
男「・・・」
「お、早かったな」
男「あーすまん」
「ほれ、サンドイッチ」
男「サンキュー・・・・はぁムカつくなー」
「なんかあったのか?」
男「あー・・・生徒会の女が超うざかった」
「マジ?3年?」
男「いや、リボン緑だから2年だな」
「2年で生徒会の女ってA組の女さんか?」
男「知らねーよ。名前なんて」
「眼鏡かけてて髪長い奴」
男「あー・・たぶんそれだわ」
「ウザいってどんな感じだったんだ?」
男「良く知りもしねーオレのノートの書き方に文句言いやがった」
「意味わからん」
男「いや、オレも分かんねーよ」
「あれじゃね?セーリで機嫌悪かったとか」
男「はー、キモイわ」
「はは・・相当イラついてんなー」
男「・・・」
「ま、女さんって車椅子だし、虫の居所悪いこともあるんだろ」
男「ん?車椅子?」
「あれ?車椅子乗ってなかった?」
男「いや、普通に椅子座ってたけど」
「そうか?まあいいや。俺食いおわったからちょっとフットサルしてくるわ」
男「ああ、俺も食いおわったら行く」
「おー」
サンドイッチを齧りながら、さっきの生徒会室の様子を思い出した。
そう言えば、部屋の隅に車椅子あったな。
車椅子に乗ってる人にさっきの言い方は無かったかな、とも思った。
が、あれだけ初対面の人間に悪態つける奴に、同情はいらないと、オレはなんとなく納得した。
―――――ある日の朝。
男「朝から集会ウゼー」
「ねみーよな」
男「せめて椅子用意しろよな。そしたら眠れるのに」
「そうだな、てかお前立ったまま寝てることあるだろ」
男「マジ?ばれてた?」
「はははっ」
『・・・これで生徒集会を終わります』
「おい、教室行こうぜ」
男「ああ・・・・」
「ん?どうした?・・・・ああ。ほら、あれだろ。A組の。な、車椅子だろ?」
男「ああ・・・行こうぜ」
「おう」
壇上の生徒会役員たちの中に、一人だけ覚束ない足取りの女生徒がいた。
しかしその女生徒は、誰の手も借りず、しかしゆっくりと壇下に置いてある車椅子まで歩を進めていた。
長い黒髪が、しっかりと伸びた背筋を覆いながら静かに揺れ動いていた。
凛としていた。
「おーい男」
男「なんすかキャプテン」
「明日の放課後予算会議あるんだけどさ、悪いんだけどお前行ってくれない?」
男「えーマジっすか?オレ何していいか分かんないすよ」
「ただ座ってるだけでいいから。行かないと予算減らされるんだよ」
男「はー了解っす」
「ワリィな」