火事でめちゃくちゃになった実家を見た時に、
ああ本当に起こったんだ、と冷静に実感をした。
全焼だった焼け跡には何も残っていなかったが、
アルバムやら保険の証書なんかの重要な書類は、
焦げてはいたけど奇跡的に焼けずにジェラルミンのケースから出てきた。
母の遺体は警察に見せてもらえず、
頬の裏側の粘膜をスプーンみたいなもので取られて、
DNA検査の結果を待ってください。なんて言われた。
僕は検視をした大学病院の先生に直接電話して、
「母は苦しまなかったんですか?」
と聞いた。
「遺族の皆さんからのそういう問い合わせはいつも本当に多いのですが、私には分からないんです。」
と優しい口調で諭された。