こんなのがデートだって言えないのはわかっている。それでも彼女と
少しでもいいから時間を共有する感覚が欲しいという願いから俺は
こんなことを考え付いたのだった。まあ元ネタは昔雑誌で読んだ遠距離
恋愛のカップルの記事なんだけどね。
俺のバーチャルデートのオファーは彼女に承諾され、ある週の土曜日に
同じ時間にそれぞれ別のレンタルビデオ店へと足を運んだ。あらかじめ
タイトルを決めておいて、それぞれ別々に借りてもよかったのだが、新作は
全部貸し出し中になってる心配があったし、旧作は置いてある店と置いて
ない店があるだろ?
だから同じ時間にビデオ屋に行って、メールで相談しながらタイトルを決める
ことにしたんだ。偶然同じビデオやでばったりと出会う。そんな期待をしていた
のは彼女には内緒。実際そんな偶然は起こらなかったけどね。
新作は案の定、全部貸し出し中のものが多かった。俺の方では借りれても
向こうが借りれなかったり、その逆だったりしてあえなく断念。
色々相談の末、結局借りたのは去年あたりにリリースされた、韓国の
純愛映画。恋愛モノに誘導したのはもちろん俺。だって初デートの
映画ってそういうものでしょ?
帰りにコンビニでスナックと飲み物を買って準備完了。彼女はじゃがりこを
買ったみたい。もし本当に一緒に映画を観ることがあったら、じゃがりこは
勘弁して欲しい。だってあれ、食べる時の音が大きいし。
14時ちょうどに映画をスタート。話には聞いていたけど、韓国の映画は本当に
話がゴテゴテしすぎてる。この映画にしても、ヒロインの昔の恋人に主人公が
そっくりだったり、別れた二人がお見合いのようなものでまた偶然に再会したり。
それでも話自体は爽やかな純愛モノで、セレクションはまずまずだった。
観終わった後のメールも、結構盛り上がったしね。それでも俺の物足りなさは
解消されるはずもなかった。同じ時間に同じものを観る。それは確かに嬉しいけれど
俺は映画のそれぞれのシーンで彼女がどんな表情をするのかが見てみたかった。
大体、肝心の映画の最中に、メールは出せないからね。