女「パンツだったんですか、真っ先にあなたの目に飛びこんできたのは」
男「そりゃそうでしょう」
男「なかなかないんですからね。パンチラに出会う機会って」
女「あなた、これからタヒぬ人間によくそんなことを言えますね」
男「逆ですよ。口なしになる人にだからこそ、思ったことをぶっちゃけてるんですよ」
女「で、抱かせてくれ、ですか?」
男「フッ、なんなら僕が抱かれてもいいですよ」
女「けっこうです」
男「うーむ。どうも、あなたは難しい人間のようですね」
女「わたしはいたって普通です。おかしいのはあなたでしょう。
タヒ後の世界にだって、初対面で抱かせてくれる人なんていませんよ」
男「たしかに。いきなりすぎましたね」
女「わかってもらえたならいいです。それじゃあさよなら」
男「なんでまた飛び降りようとしてるんですか」
女「タヒぬからです」
男「待ってくださいよ。まだ抱いてないんですから」
女「あなたに抱かれるつもりはありません」
男「今は、でしょう?」
女「一生です」
男「だから一生を終わらせようとしないで。僕の話、まだ終わってません」
男「実はどうしても聞きたいことがあったんですよ」
女「なんですか?」
男「なぜ今日はスカートじゃないんですか?」
女「なにが言いたいんですか?」
男「フッ、この建物の下から空を見あげるとね、見えるんですよ」
男「太陽よりもまぶしいもの。あなたのパンツがね」
女「あなた、どんだけパンツ好きなんですか」
男「最近の僕にとっての一番の楽しみだったんですよ。それなのに、どうして……!?」
女「べつに。今日はスカートの気分じゃなかっただけです」
男「たまたまスカートじゃなかった、そういうことですか?」
女「そう言ってるでしょう」
男「じゃあ今からスカートに着替えてきてもらっていいですか?」
女「そんな暇があるなら、さっさとタヒにます」
男「なぜそんなにタヒに急ぐんですか?」
女「タヒにたいからです」
男「べつによくないですか? どうせもうあなたはタヒぬんだから」
女「どういうことですか?」
男「タヒぬって決めたら、こころにゆとりができません?」
女「ゆとり、ですか」
男「だってこれからなにが起きても、あなたはここから飛ぶんですよ」
男「いつでも人生をクリアできるんだから、なにが起きても安心でしょう?」
女「ゼロになるというか、終わらせられるというか……結果は決まってます」
男「つまり、たいていのことは許せますよね?」
女「たしかに。たどる結末は見えてますからね」
男「じゃあ僕に抱かれましょう」