けどとりあえずの不安が去って、補修も無いし出席も足りてるしで気楽に学校も行けて。
ちょっと抜けた感じの生活。俺は朝一の講義を取る必要が無くて、夜更かししてた。
いつもは十時くらいには帰る彼女が、その日は帰らなくて。横で静かに本読み続けてて。
ちょっと眠そうにしながら、時々、時計気にして。十二時回ったところで、立った。
「あ、帰る?」「まだ。」壁に掛けてあったコートから何か、引っ張り出して。横、来て。
「はい。」「何?」「チョコ。」「え?」「十四日になったから。」「え?」
青い包装紙の箱受け取ってもまだ、合点がいかなくて。時計指さされて。確認して。
「二月十四日。」「あ。」やっと理解して。ちょっと何か、固まって。
「カノジョですから。」貰っていいの、とか聞く前に自分で言って。笑って。
「これで私が一番、先。」「一番?」「お兄ちゃんが誰かに貰うかも知れないから。」
「これ、後先って関係ある?」「あは。なんかやだから。」また、笑って。
彼女がそう思うならそうなのかなと思って。「ありがと。」どうにかお礼言って。
「ちゃんとお返しするから。」そう言ったけどちょっと首振って。
「聞いてもいいですか?」「何?」「答えてくれますか?」「だから、何?」
「答えてくれるんなら、聞きます。」「答える。」「じゃ、聞きます。」
ちょっと間置いて。「私の事、好きですか?」探るように、聞かれて。
「…うん、好き、だし、大切。」急激に乾いた喉からやっと声絞り出して。大きく息吐いて。
何も言わずに、肩に頭、乗っけてきて。手、探られて。握って。汗ばんだ手が凄く暖かで。
お互い言葉出なくて。何時だったか忘れたけど彼女の「あ。寝なきゃ。」って声に頷いて。
彼女が部屋の中入るまで見送って。部屋で一人、チョコの箱見てて。開けられなくて。
冷蔵庫にしまい込んで。色々考え初めて。頭グツグツ煮えて。殆ど寝られず学校行って。
学校の女の子は俺にはカノジョがいると知ってたので、彼女が心配したような事は無かった。